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LDの支援

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LDの支援

得意な能力を探る
〜聴覚優位と視覚優位〜

LDのある子どもの全般的な知的水準は低くありません。そのため、周囲からの期待も、本人自身の要求水準も高くなりがちです。また、要求水準と実際の結果とのギャップが大きいことから、自尊心が傷つきやすいです。自尊心感情の低下による二次的な不適応を防ぐことがとても大切です。

LDの子どもたちの学習指導で大切なことは、子どもの能力・個性に合わせた指導方法の工夫と、二次的な不適応の予防の2点です。その子の得意な能力を使った指導方法の工夫や、課題・教示の条件や要求水準の調整、あるいはICTの活用などで、困難をカバーすることが必要になります。

指導方法の一つとして、LDの心理学で紹介している、聴覚優位と視覚優位に配慮した指導法があります。聴覚優位の子どもには聴覚を活かした方略で、視覚優位の子どもには視覚を活かした方略を用いるのが基本です。また、記憶しやすくするための工夫も必要です。LDのある子どもたちには、学習面で「よくやる間違い」がそれぞれあります。「よくやる間違い」をていねいにみることで、子どもたちへの支援の手がかりが得られることがあります。

たとえば、「一石二鳥」という漢字を「一石二丁」と書いてしまうような。「いっせきにちょう」という音は合っているけれど字が違うような間違いは、目よりも耳からの情報のほうが入力しやすい、と推測することができます。一方で、「星座」を「ほしざ」と読んだり、おはしをバレリーナの足のように見えるから「おはしってバレリーナみたい」というような表現を良くする場合は、耳よりも目からの情報のほうが入力しやすいと推測することができます。聴覚優位の子どもには、耳で聞く情報を使うほうがうまく伝わります。一方、ゆきのさんのように視覚優位の子どもには、目に見える情報を使うほうがうまく伝わります。

読み書き以外では、「かけ算九九」は聴覚的な学習です。聴覚情報の処理が困難な場合、なかなか覚えられないことがあります。その場合は「九九の表」を使った視覚的な学習にすると覚えやすいかもしれません。子どもの得意な能力を知ることで、効果的な支援を行うことができるのです。

読み書きの指導の工夫

文字学習の初期には、まず文字を獲得することが目標になります。初期の文字学習の工夫として、多感覚使用(マルチエンサリーアプローチ)などがあります。多感覚使用は、視覚、聴覚、触覚、運動などのいろいろな感覚を用いて文字の獲得をしやすくする指導法です。日本の文字指導でよく取り組まれている言いながら空書(宙に書く)することも、その一つと言えます。手の甲に文字を書くと皮膚感覚を用いることになります。

その他に、読み書きが苦手な子どもへの指導の工夫には、次のようなものもあります。

  1. 体験(エピソード記憶の活用)
  2. 意味づけ
  3. 言語化(音声化)
  4. 視覚的手がかり

体験(エピソード記憶の活用)

記憶の中で、情動をともなったエピソード記憶が最も強く残ります。そこで、子どもにとって楽しい経験となるよう学習場面を工夫することで、記憶に残りやすくするのです。あるいは、子どもの興味・関心を活かす方法もあります。電車が好きな子どもなら、駅名を題材に漢字を学習したほうが身につくでしょう。恐竜が好きな子どもなら恐竜の本を、カブトムシが好きな子どもなら昆虫の本を使って学習すると効果が上がりやすいのです。

意味づけ

学校で学習するのは、ひらがな、カタカナ、漢字の順ですが、必ずしもすべての子どもにとって、ひらがなが一番やさしいとは限りません。漢字は象形文字から発生しているので、意味のあるものがたくさんあります。中には「漢字は意味があるからひらがながよりわかりやすい」という子もいるのです。

「意味づけ」は、漢字が元々もっている意味を使った学習方法です。例えば、「ごんべん」を使うのは、言葉に関係がある漢字です(話、語、講、設、許、記、計、試、説、読、課、談)。「さんずい」は、水に関係ある漢字:海、浅、深、溝、池、汽、決、汁、汗、沢、沖、波、法、注。「にくづき」は身体に関係のある漢字:脳、腹、腸、肺、肝、腎、背、臓、肥、脚、肢、脇、胴というように、部首ごとに漢字の意味を考えながら学習していく方法です。

こんなふうに、意味づけて学習する方法が合う子どももいます。

言語化(音声化)

通常の漢字学習は、視覚的な情報処理を使っています。視覚的な情報処理が苦手な子どもの場合は、言語や音を使って聴覚情報に置き換えることで、学習がうまくいく場合があります。

例えば、「木の上で立って見ている親」というように、「親」という漢字を言葉に置き換えると、聴覚情報の回路が使えます。あるいは、「業」という漢字を「たてちょんちょん、よこちょんちょん、よこよこたて、ひだりみぎ」というように、音に変えて覚える方法です。これが音声化です。

視覚的手がかり

漢字を学習するときに、次のように絵に表して理解しやすくする方法です。

明

文章を読むときに、スラッシュ「/」などを使って言葉のまとまりをとらえやすくするのも効果的です。また、黄色いフィルターをかけるとよく見えるようになる子どももいます。子どもによってはグレーや赤いフィルターがよいこともあります。

ICTの活用と合理的配慮

2016(平成28)年に「障害者差別解消法」が施行され、公立学校では「合理的配慮の提供」が義務となりました。合理的配慮としてタブレットなどの使用が認められたことは、LDのある子どもにとっては大きな福音です。ICTを活用することで、学習の入り口の「読み」でつまずいていた子どもが、学習内容にアプローチできるようになります。読みの支援ツールとしては、デイジー教科書や、デジタル教科書などが開発されています。2019(平成31)年には「学校教育法等の一部を改正する法律」等関係法令が施行され、必要に応じてデジタル教科書が併用できるようになりました。デジタル教科書は、タブレットやPCで利用でき、必要に応じて拡大したり音声で出力したりすることができます。

また、これまでの手書きに限定した学習指導では、LDのある子どもたちには大きな困難がありました。板書をノートにとることが困難なLDの子どもは少なくありません。タブレットを使って板書を写真に撮ってノートを作成できれば、より学習効果が上がります。書くことの困難に配慮した「試験時間の延長」も合理的配慮として認められています。

試験の問題や印刷物など、フォントによって読みやすさが異なることはご存じでしょうか。一般的に明朝体は最も読みにくいといわれています。メイリオや丸ゴシックなどのほうが読みやすいフォントです。最近ではUD(ユニバーサルデザイン)のフォントも開発されています。そのひとつのUDデジタル教科書体は、多くの人が読みやすいフォントです。

また、子どもによっては用紙の色で読みやすさが変わることがあります。黄色い紙が読みやすい子どももいれば、赤やグレーが読みやすいという子どももいます。

文字のフォントやサイズ、紙の色などはICTの活用で簡単に変更することができます。

課題・教示の条件や要求水準の調整

ワーキングメモリが弱い子どもの場合、一度に複数の指示を出されてしまうと、わからなくなってしまうことがあります。その場合は、一度に伝えることを、一つずつ短い文章にすることで、うまくできることが増えます。

どのクラスにも、一生懸命やっていても時間がかかってしまう子どもはいるでしょう。処理速度の問題があると、一つひとつの情報処理や作業に時間がかかってしまいます。周りの子どもが20題のドリルをこなしているのに、5題くらいしか終わっていないことがあります。処理速度の問題をもつ子どもたちは、時間内にこなしきれない経験を積み重ねることで、意欲が低下してしまうことがあります。時間さえあればできる子どもたちです。一度に出す課題の量を減らしたり、可能なときには十分な時間をとるようにしたりすると、「できた」という達成感を味わい、自信を取り戻すことができます。

LDのある子どもたちは、とても繊細な面があります。数多くの失敗経験から自信を失っていたり、臆病になっていたり、努力しても報われないと学習性無力感に陥ったりします。少しずつ小さな目標を達成していくことで、自信を取り戻せるような機会を作ってあげるようにしましょう。

多様な学習方法

学習方法は一つではありません。人によって、得意なものは違います。みんなと同じやり方でうまく学べなくても、一つのやり方だけにこだわらず、自分に合った学びのスタイルで学んでいければよいのです。視覚情報、聴覚情報、ICTの活用など多様な手がかりを用いることで、多様な子どもが学べるようにしましょう。さらに、子どもに合わせた目標を設定することで、子どもの意欲と学びを支えていくことを大事にしたいと思います。

障害のある子どもたちの教育を考えるとき、2つのアプローチがあります。1つめは、障害された機能をいかに活かすか、2つめは、障害されていない機能をいかに活かすか、というものです。苦手なものをどれだけ克服するかと、得意なものをどれだけ伸ばすか、と言い換えてもよいでしょう。弱い部分だけを取り上げていても行き詰まるし、強いものだけを見ていても現実的でなくなるのです。現実の世界を生きていく子どもたちを支えるために、バランスよい支援を工夫していきたいものです。